小規模宅地等の特例とは

納付すべき相続税額を計算する際の優遇制度の1つに「小規模宅地(しょうきぼたくち)等の特例」というものがあります。

この特例は、相続税額を算出する上で、納税者にとってなくてはならない極めて重要な、かつ、貴重な制度であり、この特例を適用することによって、結果として納付すべき相続税額が発生しないこのような場合でも期限内申告書等の提出は必要となりますということもあります。

「小規模宅地等の特例」とは、大まかにいえば、一定の要件を満たす小規模の宅地等(土地、借地権)については、相続税を計算する上での価値(相続税評価額)を80%減額する、というものです。

たとえば、所定の要件を満たす土地等について、通常評価額1億円の価値の土地を、約2,000万円の価値の土地として相続税を計算する、というものです。

ただし、その適用要件は厳格で、どんな宅地等でも一律に80%(特例対象宅地等のうち特定事業用宅地等の一部の業種については50%)評価減の適用を受けられる、という訳ではありません。

その適用要件の判断を誤って計算・申告・納税(結果として過少申告、過少納税)をすると、後の税務調査で指摘を受け、本来納付すべきであった税額との差額とともに、多額の付帯税(延滞税や加算税)を納付しなければならなくなるという事態になりかねません。よって、その適用の可否や評価減される額の算出については専門家に一任することが望ましいと言えます。

 

しかし、その専門家であっても、適用要件の認識についてがあいまいな場合があり、結果として納税者にとって不利な適用判断(税理士にとっては税務調査における指摘等のリスクを軽減した状態=納税者不利)に基づく計算でそのまま申告を済ませている、というケースが実際に見受けられます。

 

相続税の申告をご依頼される場合、同じ専門家でも、こと相続税について知識や経験があるかどうかを事前に確認することが重要です。税理士に対してそれを聞くことは、まったく失礼には当たりませんので、必ず確認してからご依頼してください(相続法や相続手続きについては、税理士以外の専門家の職域となります)。

 

さて、その小規模宅地等の特例の適用判断は、前述のとおり専門家に一任するとしても、この特例についての基礎知識を備えておくことは有用です。

特例のすべてを知ることは大変困難ですが、およその概略を知っておくと、被相続人予定者の所有する宅地等についていろいろな選択肢を考えられることとなり、結果として相続対策の一助となるかもしれません。

以下に、全部で4つある小規模宅地等の特例のパターンについて、その基礎を記載いたしますので、ご参考になさってみてください。

なお、「宅地等」とは、土地及び土地の上に存する権利(=借地権)をいいます。

 

平成27年1月1日より施行されている改正相続税法において

① 有料老人ホームにお住まいの方の元自宅について

② いわゆる二世帯住宅の取り扱いについて

納税者にとって有利になるよう、適用の改正がなされました!

 

 

また、特定宅地等以外の宅地等に係る適用につき、評価減が適用されない等、整備されました。

 

さらには、平成30年1月17日付紙面にて、「法制審議会・相続部会」において、「配偶者居住権」の創設を検討中、との報道がなされています。

 

 

 

1. 特定居住用宅地等

その相続の被相続人またはその被相続人と生計を一にしていたその被相続人の親族(以下「被相続人等」といいます)の居住の用に供されていた宅地等で、その相続または遺贈によりその宅地等を取得した個人のうちに、その被相続人の配偶者、または次に記載する要件のいずれかを満たす、その被相続人の親族(その被相続人の配偶者を除きます)がいる場合の、その宅地等をいいます。

 

親族の要件①

その親族が、その相続開始の直前において、その宅地等の上に存する、その被相続人の居住の用に供されていた家屋に居住していた者であって、その相続開始時から申告期限まで引き続きその宅地等を有し、かつ、その家屋に居住していること。

?どういうこと?

相続が始まる前から亡くなった方と同居していて、相続が始まった後も、申告期限までずっとその宅地を相続して、売ったりあげたりあるいは貸したりせずに所有し、ずっと住み続ければ80%評価減を認める、というものです。

 

親族の要件②

その親族(その被相続人の居住の用に供されていた宅地等を取得した者に限る)がその相続開始前3年以内に法施行地内にある、その者またはその者の配偶者の所有する家屋に居住したことがない者であり、かつ、その相続開始時から申告期限まで引き続きその宅地等を所有していること(その被相続人の配偶者またはその相続開始の直前において上記親族の要件①に規定する家屋に居住していた法定相続人である親族がいない場合に限る)。

?どういうこと?

いわゆる独居老人や「家なき子」の救済措置です。                                                                         これまで相続開始前の一定期間内に持ち家を所有したことがない子について、独居となってしまっていた親御さんの所有するその親御さんの居住用宅地等を取得した場合、将来の生活拠点の保全・維持やその状況を勘案して、特定居住用宅地等として80%評価減を認めるものです。                                                                          転勤族の方の保護が背景にあり、要件として相続した宅地等に「住むこと」が要求されていません。

 

なお、この「家なき子」の救済措置については、このルールの隙をつくテクニカルな節税を抑制するため、平成30年4月1日以降開始する相続につき、所定の整備が行われています。

近日中に、現行の要件を掲載いたします。

 

親族の要件③

その親族が、その相続に係る被相続人と生計を一にしていた者であって、その相続開始時から申告期限まで引き続きその宅地等を有し、かつ、相続開始前から申告期限まで引き続きその宅地等を自己の居住の用に供していること。

?どういうこと?

要件①と似ていますが、③は「同居」はしていなかったものの、「生計を一にして」いた場合であれば、要件を満たせば80%評価減を認める、というものです。                                                                      親御さん所有の土地の上に、息子夫婦が建物を建てて住んでいた、等の事例が当てはまります。

なお、「生計を一にする」の定義については、本稿巻末をご覧ください。

 

特定居住用宅地等については、その被相続人の配偶者が相続した場合、無条件で80%評価減となります。

なお、配偶者以外の者がその宅地等を取得した場合で、申告期限までの継続所有・居住要件を満たさないとき、以前は50%評価減が認められていましたが、22年度税制改正により廃止されました。

 

特定居住用宅地等の評価減限度面積は、平成27年1月1日以降開始の相続より、その限度面積が330㎡=約100坪(改正前は240㎡)に拡大されています。

また、これまでは有料老人ホームに移った後の自宅については継続居住要件を満たさないとされていましたが、①介護が必要なために有料老人ホームに移った ②その自宅を貸し付けていないこと の2つの要件を満たせば、継続居住要件をみたすこととされること、さらには、外階段のみが設置されているいわゆる二世帯住宅について、同居として認められることとなりました。

 

 

2.特定事業用宅地等

被相続人等の事業(不動産貸付業その他一定のものを除く)の用に供されていた宅地等で、その相続または遺贈によりその宅地等を取得した個人のうちに、以下に記載する要件を満たすその被相続人の親族がいる場合の、その宅地等をいいます。

 

親族の要件①

その親族が、その相続開始時から申告期限までの間に、その宅地等の上で営まれていたその被相続人の事業を引き継ぎ、申告期限まで引き続きその宅地等を有し、かつ、その事業を営んでいること。

?どういうこと?

被相続人が個人商売を営んでいた場合で、その商売上の店舗等の敷地を相続した親族が、相続をきっかけにその商売を引き継ぎ、申告期限までその宅地の所有および商売を継続していれば、80%評価減を認める、というものです。

 

親族の要件②

その親族が、その相続に係る被相続人と生計を一にしていた者であって、相続開始時から申告期限まで引き続きその宅地等を有し、かつ、その相続開始前から申告期限まで引き続き、自己の事業の用にその宅地等を供していること。

?どういうこと?

相続人である子などが、親の所有する土地の上で個人で商売を営んでおり、相続によりその土地を引き継ぎ、申告期限までその商売を継続、土地も手放さなければ80%評価減を認める、というものです。

なお、営む商売について、一部を不動産貸付業以外の業態に変更してもかまいません。だだし、一部または全部を廃業、不動産貸付業への業転、あるいは法人成りをした場合等は、その対応部分について小規模宅地等の特例の適用はなくなります。

 

特定事業用宅地等の評価減限度面積は400㎡となっています。

なお、平成25年度税制改正により、平成27年1月1日以後開始の相続につき、以下の通り特定居住用宅地等との完全併用(=最大で730㎡まで適用可能)できることとなっています。

 

改正前 : 総ての選択特例対象宅地等の面積の合計が400㎡以下

現行   : 特定居住用宅地等330㎡に加え、特定事業用(特定同族会社事業用)宅地等400㎡につき適用可

 

 

 

3.特定同族会社事業用宅地等

その相続開始の直前に、その相続の被相続人およびその被相続人の親族、その他その被相続人と特別の関係がある者が有する株式の総数または出資の総額が、その株式または出資に係る法人の発行済株式の総数または出資の総額の10分の5を超える法人の事業の用に供されていた宅地等で、その宅地等を相続または遺贈により取得したその被相続人の親族(その法人の役員である者に限る)が、相続開始時から申告期限まで引き続きその宅地等を所有し、かつ、申告期限まで引き続きその法人の事業の用に供されているものをいいます。

?どういうこと?

たとえば工場が1棟あったとして、その底地は社長の個人所有、上物の工場は法人が所有していて、その法人から社長個人へ敷地の地代が支払われているような形態を思い浮かべてください。

このとき、その法人の株主構成につき一定の要件を満たし、かつその底地をその社長の親族で、その法人の役員である方が相続した場合、その底地について80%評価減を認める、というものです。

ここで重要となるのが、株主構成もしかりですが、法人と底地の所有者との間で地代のやりとりがなされていることが必須です。この場合、家賃の金額についてはいくらでも構いません。

 

無償でのやりとり、いわゆる使用貸借である場合は、この底地については評価減はありません

 

ですので、この相続開始前にこの特例の適用を予定している場合は、

① その底地の相続予定者をあらかじめ役員に就任させておく                                                     ② 法人と個人間で賃貸借契約を締結しておく

ことが生前に求められます。

 

※ 補足 ~ 「特別の関係がある者」とは?

① その被相続人と婚姻の届出はしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者                              ② その被相続人の使用人                                                                      ③ その被相続人の親族及び①と②に掲げる者以外の者で、その被相続人から受けた金銭その他の                             資産によって生計を維持しているもの                                                            ④ ①~③に掲げる者と生計を一にする、これらの者の親族                                                ⑤ 次に掲げる法人                                                                                イ その被相続人(その被相続人の親族およびその被相続人に係る上記①~④に掲げる者を含む)                                が有する法人の株式の総数が、その法人の発行済株式総数(自己株式を除く)の10分の5を超え                                  る数の株式に相当する場合における、その法人                                                            ロ その被相続人およびこれとイの関係がある法人が有する他の法人の株式の総数が、当該他の                                 法人の発行済株式の総数の10分の5を超える数の株式に相当する場合における、その当該他の                                  法人                                                                                     ハ その被相続人およびこれとイまたはロの関係がある法人が有する他の法人の株式の総数が、                                  当該他の法人の発行済株式の総数の10分の5を超える数の株式に相当する場合における、当該                                 他の法人

 

 

 

4.貸付事業用宅地等

随時記載いたします。

 

 

 

 

 

 

 

 

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